病態
肺血栓塞栓症は、肺動脈に血栓が詰まることで生じる病気です。血栓は主に足の静脈にできます。足でできた血栓が血流にのり、肺動脈に詰まることで生じます。
症状
肺血栓塞栓症で良くみられる症状は息切れ、胸痛です。他にも突然意識を失う失神が起こることもあります。咳嗽や血痰がみられることもあります。大きな血栓が詰まった場合には、ショック状態となり、心肺停止になることもあります。
原因
下肢の静脈に血栓ができることが肺血栓塞栓症の原因です。血栓がなぜできるかというと、以下の3つが原因と考えられています。①血流の低下、②凝固能亢進、③血管内皮障害の3つです。
①血流の低下
ベッド上に長くいることが原因であることが多いです。特に手術後の安静は要注意です。また飛行機の中のように長時間座位でいることもリスクです。
②凝固能亢進
凝固能亢進は後天的なものと先天的なものに分かれます。後天的なものとしては、悪性腫瘍、妊娠・産後、各種手術や外傷後、骨折、熱傷、薬物(経口避妊薬など)などがあります。他にも、ネフローゼ症候群、抗リン脂質抗体症候群も原因です。また脱水も凝固能が亢進する原因です。先天的なものとしては、アンチトロンビン欠乏症、プロテインC欠乏症、プロテインS欠乏症などがあります。
③血管内皮障害
外傷や骨折、血管内へのカテーテル留置、血管炎、喫煙などが原因です。
診断
症状から肺血栓塞栓症が疑われた場合、Wellsスコアを計算します。①肺血栓塞栓症あるいは深部静脈血栓症の既往、②最近の手術あるいは長期臥床、③癌、④深部静脈血栓症の臨床的徴候、⑤心拍数>100/分、⑥肺血栓塞栓症以外の可能性が低い、⑦血痰の7項目で評価します。このうち2項目以上当てはまると、肺血栓塞栓症である可能性が高いと言えます。
肺血栓塞栓症のスクリーニング検査としては、胸のレントゲン検査、心電図検査、Dダイマー値の測定があります。レントゲン検査では、肺動脈陰影の拡大、Westermark徴候、ナックル徴候がみられることもあります。肺梗塞を合併した際には肺野の浸潤影、右心不全になっている時は、胸水が観察されます。心電図検査では洞性頻脈の他、右脚ブロック、右側胸部誘導での陰性T波が良く観察されます。S1Q3T3がみられることもあります。
Dダイマー値が、0.5μg/dLの時は否定的です。50歳以上では Dダイマー=年齢×0.1(μg/dL)をカットオフとしても、診断能は保たれることが報告されています。
肺血栓塞栓症は、循環器専門医が院長の本八幡内科・循環器クリニックで診療可能です。院長は日本赤十字社医療センター循環器内科で勤務しました。その後、日本医科大学付属病院総合診療科で内科全般の診療にあたりました。循環器内科はもちろん、内科全般の診療が可能です。